紅梅散舞

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 江戸に戻った紅葉は、土方に言われた通り、日野の佐藤家をたずねた。  佐藤家は土方の姉の、のぶが嫁いだ先で、土方はほとんどここに入り浸っていたと言っていた。  紅葉が手紙を渡すと、のぶの亭主の彦五郎は紅葉を快く迎えてくれた。  のぶは土方によく似た女性だった。  母を早くに亡くした土方が、母とも慕っていた女性である。  強くはっきりとしていて、真っすぐな性格で、土方が自分の意思を貫き通す強さを持ったのも、彼女の影響であろう。  しばらく、紅葉は佐藤家で世話になっていたが、ほとんど抜け殻のようで、毎日縁側に腰掛けて、空を見ていた。  このままではいけない。  それはわかってる。  でもこれからどうすればいいのかわからない。  そんな毎日を送っていた、ある朝のことだった。  紅葉はいつものように縁側に腰掛けていた。  梅雨に入って雨が多かったが、久しぶりの晴れだ。  空には太陽が輝き、蝉の鳴く声が聞こえていた。
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