3944人が本棚に入れています
本棚に追加
/449ページ
ふいに、梅の香がしたような気がした。
もう梅はとっくに散ってしまっているはずだ。
気のせいかな。
だか、再び梅の香がする。
今度ははっきりと。
辺りを見回しても、梅なんてどこにも咲いていない。
もしかして。
紅葉は、はっと気付く。
逝ってしまったのだ・・・・・・
紅葉の瞳から、涙がこぼれ落ちる。
誰にもわからなくても、私にはわかる。
土方が逝ってしまったのだ。
最期まで誠を貫き駆けた。
激動の時代を、鮮やかに、紅の花びらを撒き散らし駆け抜けた。
世間では鬼と呼ばれたが、ただひたすら真っすぐで、純粋で、ひどく不器用な男だった。
最初のコメントを投稿しよう!