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夕餉の途中で、土方は戻ってきた。
だが配膳に追われる紅葉に土方と話すチャンスはない。
片付けも終わり、遅い夕食を食べた後、
「ご苦労さん。ほなまた明日ね」
しずとはつは帰り支度を始めた。
「え? 帰るんですか?」
紅葉は驚いてたずねる。
てっきり二人もここに住んでいるものだと思っていたからだ。
「うちは八木邸の女中やさかい、八木邸に住んでるんえ。しずさんは通てはるんや」
はつが答えた。
そういえば土方は、最初に八木邸の女中がどうのとか言っていた。
「ほな明日」
はつは人懐こい笑顔で手を振った。
一人取り残された紅葉は炊事場で呆然と立ち尽くす。
どうしよう。
そうだ、土方さん。
土方に話を聞くという目的を思い出すと、紅葉はたすきを外して土方の部屋へ向かった。
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