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なんだろう。
ひどく懐かしい。
「おじいちゃんが散々テレビで観てたから覚えたんじゃない」
「そう簡単に覚えられる技ではないがな」
祖父は言った。
「でもおじいちゃん以外に教えてもらったことなんて、本当にないよ」
紅葉はそれ以上突っ込まれるのを避けるように、道場を出た。
このことについて、これ以上話をしたくなかった。
自分でも理由はわからない。
道場を出ると、庭の梅が咲いていた。
いつの間にか季節は春を迎えようとしている。
あんなにこだわっていた免許皆伝も、もうどうでもよくなっていた。
私はただ剣を振るっているだけでいい。
肩書きなんてどうでもいい。
この心境の変化は、紅葉自身も不思議だった。
今思えば、ただ祖父に認められたい一心だったのかもしれない。
だけどそれも、もうどうでもいい。
大切なのは祖父が傍にいて、一緒に、笑いながら剣を振っていられればそれでいい。
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