序章

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「何者だ」  低いがよく通る声。 「あなたこそ何者?」  紅葉は恐る恐る聞き返した。  泥棒にしては堂々としすぎている。  道場やぶり? まさか今時。  ましてやこんな時間に。 「見ない顔だな」  青年は紅葉の顔をじっと見た。  その射すような視線に、紅葉は思わず目を背ける。 「隊のものではないな? ここで何をしていた」 「何って・・・あなたこそ何を? ここは・・・」  うちの道場、と言いかけて紅葉は言葉を止めた。  違う。道場の中じゃない。  足が砂利を踏む感覚。  石畳が並び、青年の向こう側には木造で瓦屋根の門が見える。 「ここは・・・どこ・・?」
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