序章

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 紅葉の問いに答えず、青年はうっすらと笑った。  青白い月に照らされて、それが不気味にうつる。 「寝ぼけたことを。小僧」  小僧?  紅葉は眉をひそめた。  確かに紅葉は胴着のままで、二十ニにもなるのに化粧っけもない。  髪も肩にかかるくらいのミディアムで、筋肉でしまった体型をしているせいか胸は小さく、更にきりっとした顔立ちなので男に間違われることはなくはない。  その上童顔で、いまだに十代に見られるので少年と言われることはある。  でも小僧はひどい。  紅葉はきっと青年を睨んだ。 「面白い」  青年は足元の竹刀を拾うと、自分の木刀を紅葉に向かって投げ、構えた。  これは、勝負しろということか。  しかし木刀と竹刀では勝負にならないだろう。  それだけ自分の技量が低く見られているということか。  馬鹿にしてる。  紅葉は怒りがこみ上げるのを押さえて木刀を拾った。
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