3949人が本棚に入れています
本棚に追加
紅葉の問いに答えず、青年はうっすらと笑った。
青白い月に照らされて、それが不気味にうつる。
「寝ぼけたことを。小僧」
小僧?
紅葉は眉をひそめた。
確かに紅葉は胴着のままで、二十ニにもなるのに化粧っけもない。
髪も肩にかかるくらいのミディアムで、筋肉でしまった体型をしているせいか胸は小さく、更にきりっとした顔立ちなので男に間違われることはなくはない。
その上童顔で、いまだに十代に見られるので少年と言われることはある。
でも小僧はひどい。
紅葉はきっと青年を睨んだ。
「面白い」
青年は足元の竹刀を拾うと、自分の木刀を紅葉に向かって投げ、構えた。
これは、勝負しろということか。
しかし木刀と竹刀では勝負にならないだろう。
それだけ自分の技量が低く見られているということか。
馬鹿にしてる。
紅葉は怒りがこみ上げるのを押さえて木刀を拾った。
最初のコメントを投稿しよう!