序章

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 自分に敵う男はそうはいない。  紅葉には自信があった。  だが実際構えて向き合うと、その自信が崩れそうになる。  隙がない。  気迫が炎となって伝わってくるような気がした。  空気は冷たく、ひどく冷えるはずなのに木刀を握る手が汗ばむ。  しかしいつまでも睨み合っているわけにはいかない。  紅葉は奇声とともに振りかぶった。  が、青年はそれを難なくかわすと、紅葉の足元に打ち込む。  紅葉は後ろに跳び下がり、それをよける。 「やるな」  青年は言った。  その声が弾んでいる。  こっちは必死なのに、相手は余裕なのだ。  紅葉は青年の小手を狙いにいくが、それも難無くかわされてしまう。  青年は竹刀で木刀を受けることはせず、あくまでかわすだけ。  さすがに木刀を受ければ竹刀が割れることをわかっているのだろう。
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