序章

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 こんなにかわされるなんて。  紅葉は焦っていた。  そしてその焦りが隙を作った。  振り下ろした木刀をよけ様、青年が紅葉の懐に飛び込んだ。  あっと思う間もなく、紅葉は小手を打たれ、木刀が紅葉の手を離れ宙を舞った。 「遊びは終わりだ」  言うと同時に青年の手が素早く動いた。  竹刀が地面に落ちる音がすると同時に、風を切るような音がした。  紅葉は呆然と立っていた。  何が起きたのか、ただ胸の辺りが一瞬で熱くなる。 「女?!」  青年が驚いたように声をあげた。  月明かりに鈍く光るものが見える。  それは青年の手に握られ、刀身にはっきりとした刀紋が浮き出ていた。  あれは・・・・・日本刀・・・・・・・
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