血濡れの月

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それは、あまりにも突然過ぎる出来事だった。 なんと、今まで死んだとばかり思っていた女の子が急に言葉を発したのだ。 「だから、私に楽しい思い出...作ってくれるのだろう?」 「うぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 「きゃっ!?」 思わずその場から陸上選手もうっとりするような跳躍をして、彼女から飛び退いた。 彼女はその衝撃で尻餅をついて地面に落ち突然の俺の奇行に驚いていた。 だが、こちらの驚き具合はそんなものの比ではない。 「ななななんで生きて...!あれだけの血が!血が!!血がぁあ!!!」 物凄い速さで後退りしている今の俺は、傍から見れば間違いなく滑稽に見えるだろう。 だが、それも時と場合による。 死んでいたはずだった...少なくとも、俺は湖のような量の出血の後にケロッとした顔をできる人間を知らないし、聞いた事もない。 「あいたー...。抱えてる女の子をいきなり地面に落っことす男なんて、初めて遭遇した...」 「こっちこそ、生き返る女の子なんて初めて出くわしたわ!」 どうにも、この娘は見た目の可愛さによらず天然さんらしい。
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