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人気が失せ、辺りも静まり返った午後8時頃。
わたくし明智一星(あけち いっせい)は、暗闇の中で不気味にたたずむ校舎の前にて立ち尽くしておりました。
「.....あー」
決して俺とて、夜の学校とにらめっこをするほど暇なわけではない。
むしろ家に帰ればやらなければならない事が山積みなのだ。
晩飯の用意、学校の宿題、ゲームもしたい――。
つまり、本来ならばこんな所で時間をくっている場合ではないのだ。
「そうだ...これは夢だ。きっと俺は日頃の行いが悪いから、神様が悪い夢を見せてるだけなんだ。うん、きっとそうだ」
夢、そう自分に言い聞かせ、もう一度ゆっくり目の前のそれを見た。
月が雲に隠れてるせいか、今は暗くてよく見えない。
だが、それは常識ではあってはならない情景であると身体中が危険信号を送っていた。
果たしてここは見て見ぬフリをするべきなのか。それとも――
「あーくそっ。どうして俺がこんなに悩まねばならん。嗚呼、なぜか涙が...」
俺は自分で言うのもなんだが、目の前の問題は無視できないタイプの性格である。だから今回もなんとかしようとは思うのだが...
と、不意に雲の切れ間から月が顔を出した。
闇夜に映え、美しく輝く月光が、鮮明にそれを照らし出す。
そこには、学生服を着た血まみれの女生徒が力なく横たわっていた。
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