孤独の月

7/10
前へ
/24ページ
次へ
「ゆぅぅぅぅうじぃぃぃぃいっ!!!!」 それだけで相手を殺せそうなほどの雄叫びをあげながら、バンッ、と居間の扉を思いきり叩き開けた。 さっさとあいつを仕留めないと...と、何か方向性が違ってきたが細かい事は気にしない。 やつを仕留めるために俺は辺りを見回した。 「貴様だけは俺がぶん殴って.....って、あれ?」 だが、居間のどこを探しても裕二はどこにもいなかった。 電気もついてるし、おまけにテレビまでついたままで、ちょうど9時から始まるドラマのオープニングが流れていた。 「まさか裕二のやつ、俺の騒ぎを聞きつけて先に隠れやがったか...?」 本当は何も悪くない裕二を仕留めようと、他の部屋を探しに行こうとすると、ふと机の上に置いてある紙切れに気付いた。 「ん?置き手紙...?」 『すまん一星、待ちくたびれたんで先に帰るわ。鍵をかけれないからそのまま行くけど、まぁ居間を賑やかにしときゃ泥棒も来ないだろう。 んじゃま、残りの宿題頑張れよっ! ...続いてこれを読んでる泥棒さんへ。こいつの家には本当に何もありませんので、来るだけ時間の無駄であって――』 「.......」 あいつ、とりあえず次会ったらただじゃおかねぇ。 なんだかわからないが、そんな俺の本能が脳みそに決定事項を刻み込んでいた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加