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「ほい、インスタントが口に合うかはわかんねーけど」
まずはもてなしだ。
俺は淹れたての安物のインスタントコーヒーを渡した。
「ん、すまないな。インスタント、嫌いではないぞ?」
「そりゃよかった。まだ熱いから気をつけな」
「あぁ、ありがとう。一星は見掛けによらず紳士なのだな」
「ば、馬鹿野郎っ!俺はいつだって見た目だって紳士だぞ!」
「わかったわかった、いちいち一星の反応は可愛いな。ふふっ」
「ったく...」
可愛く(?)ふて腐れながら、俺は美月の向かいの椅子に座った。
なんというか、こう、直視するのが恥ずかしいな...。
猛烈に根性無しな俺は、とりあえず格好だけでも美月から逸らそうと斜め向きに座る事にした。
「...で、美月の話を聞かせてもらいたいんだが...」
「.....」
俺が本題を切り出すと、美月はぱっと真剣な表情に変わった。
美月は笑っているほうが可愛いとは思うが、今はこのほうが話がしやすくて助かる。
...まぁ、こういう真剣な表情ってのも少し魅かれるものがあったりするが。
「単刀直入に聞く...。お前は人間なのか?」
「私は...」
少しの静寂――。
辺り一帯を無音が包んでゆく。
やっぱ単刀直入に聞き過ぎたかな...。
そして俺が声を出そうとしたその時、彼女の声が静寂した空気を割って出た。
「...私は、人間であって人間でない。私は...一度はこの世を去った人間だ」
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