血濡れの月

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時をさかのぼる事30分、俺は自宅にて大いに迷走していた。 「ふはは、なんというこの充実感!勉強というものがこれほどにも素晴らしいものだったとは!もしかするとこのまま俺はとてつもない勉強家に――」 だが、その手にあるシャーペンが、たった一つの真実すら刻む事はない。 「ははははは!ははは........はぁ...」 静寂の後に残ったのは、白紙の数学プリントと限り無く押し寄せてくる脱力感と、ほんの少しの羞恥心だけであった。 「っかしいなぁ、こういうのは気の持ちようだと思ったんだが...。やっぱ意気込みだけじゃ駄目か?」 「バーカ、一星の脳みそでそんな器用な事ができるか!危うく俺の美的な腹筋が砕けるところだったぞ!」 ひぃひぃと笑いをこらえながら裕二が言った。 「裕二、今のは宣戦布告と見なして構わんな?」 言いながらチラリと裕二のプリントに目をやると、わけのわからない数字列でびっしり埋まっていた。 「うぅ、いつも思うが、こういうのはお前のキャラじゃない...」 「ま、やるときはやる男だって事さ!」 へへん、と裕二がエラそうに鼻なんかを擦りながらシャーペンを走らせている。
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