血濡れの月

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とてもじゃないが、こんな状況で冷静な判断ができるほど明智一星はできた人間じゃない。 自慢なわけじゃないが、俺はイレギュラーなトラブルにはとことん弱い人間である。 裕二ならばこういう時に冷静な対処ができるだろうが、少なくともさっきまで国語のプリントの事しか頭に無かった馬鹿ではまず何もできない。 「なんだってんだよ...。...まぁなんで死んじまったのかはわかんないけど、あんたの顔少し確認させてもらうぞ。こっちも、このモヤモヤを誰にぶつければいいのかハッキリさせたいしな...なんてな。 ははっ!誰もいないのに何言ってんだろ、俺!」 そんな自嘲を呟きながら、横たわった女生徒の顔に手を近付けていく。 死体に触れる事に嫌悪しながらもゆっくりと俯せになった彼女の顔を上げた。 「なっ...!?」 その瞬間、俺の中のあらゆる回路に電撃が走り、その活動をやめた。 そして最後に残った重大な事実―― 「か、可愛い...」 それは、思わず声にしてしまったほどの偽りのない感情。不覚にも俺はその娘の眠るような表情に目を、心を奪われてしまった。
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