~prologue~

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「父さん、母さんっ……!!」  両親が事故に遭った。その知らせを受けたのは、高校受験を控えた十二月の、特に寒い日だった。交差点で信号無視をした乗用車に横から追突されたのだそうだ。全身を強く打ち、即死の状態だったらしい。  両親は共に、全国に知らない者はいないと言われる程の腕前の料理人で、僕が生まれた年に立ち上げた喫茶店『薫り』も幾度と無くテレビで紹介され、喫茶店とは思えないメニューの豊富さと味が評判で、ここ菱岡市一番の名所となっていた。  僕にとって憧れであり、目標であった両親。そんな二人の、突然の訃報。  朝のHR中に学校に連絡が入った時、文字通り崩れ落ちた。暫く立ち上がる事も声を出す事も出来なかった。  早退扱いにさせてもらい、大急ぎで病院まで駆けつけ、今に至る。  残ったのは空しさだけだった。両親が、憧れの存在が、もう二度と自分に微笑みかけてくれる事は無い。まだまだ教わりたい事は沢山あったのに、それが二度と出来ない。  柄にもなく泣いた。号泣した。最後に涙を流したのはいつだっけと、頭では見当違いの事を考えながら。
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