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訳の分からないツッコミを入れて自販機をガンガンと叩く彼の姿は、端から見れば凄まじい奇行だが、これまた本人にとっては一大事なので仕方無い。
しばらく自販機を叩いていた龍冶だったが、やっと自分の行為が体力の無駄だと気が付き、新たなオアシスを求め、その場を離れてとぼとぼと歩き始めた。
しかし、彼の体力も、もはや限界に近くいつ倒れてもおかしくな………あ、倒れた。
【し…しぬぅ……俺、こんな所で死ぬのかぁ……なんか、すっげぇ、マヌケな死に方だなぁ……】
地べたにうつ伏せに倒れながら、そんな事を考えている彼の脳裏には、何か走馬灯のようなものが駆け巡っていた。
小さい頃から今までの記憶。
思い返すと、ろくなものではなかった。5歳の頃に父親が出て行った時からが特に酷い。
彼の母親は、女手一つで彼を育てるために働き、今ではほぼ丸一日家にいない状態。
そして、疲労とストレスから、小さな息子に当たり散らす彼女。
幼い頃に母親の愛情を充分に受けられなかった彼は、当然のように、不良の道へと墜ちていった。
まるで、居場所を探すかのように……
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