第一章

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「……………え?」 一応、説明しておくがお金が自動販売機に入った音ではない。 では、一体何の音?彼の経験上これは硬貨が地面に落ちた時の音だ。 ただ、落ちただけなら拾えばよい。 ……落ちた後に転がらなければ。 転がったのなら、素早く止めればいい。 ……転がった先が下り坂でなければ。 残ったお金が120円あったら、何の問題もない。 ……転がった硬貨が銀色に光っていなければ。 「逃がすかぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」 叫び声と共に全速力で硬貨を追い掛け始める龍冶。 それと同時に、坂を転がり始めた硬貨。 坂を下りながらの追いかけっこ。坂が急だからか、なかなか龍冶は硬貨には追い付けなかった。おそらく、体力的な問題でもあるだろう。 それでも、必死な形相で、お金を追いかけている高校生というのは、何というか…凄く、見ていて痛々しい。
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