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「あぁ、飲み物をご所望でしたね。そこにあるんで勝手に飲んどいて下さい」
少女はそう言うと、長机の上を指差す。すると、そこには、水が注がれたコップが置いてあるではないか。
さっきまで、長机には何もなかった筈なのに……
【い…いつの間に…さっきまでは、何もなかったじゃねぇか…!?】
そもそも、なぜ、少女は龍冶が水分補給をしに、ここに立ち寄った事を知っているのだ?
明らかに異常な事が次々に龍冶の目の前で起こっていた。
しかし、もしかしたら彼の勘違いかも知れない。
急に少女が現れたのも、本当はどこかに隠れるスペースがあったのかも知れない。または、龍冶が入った時に全く気付かず素通りしたのかも。
コップだって、そうだ。単に見落としただけかも知れない。
少女が、龍冶が水分を欲していたのを知っていたのは、汗だくで入ってきた彼を見て、少女が勝手に判断しただけかも知れないのだ。
まだ、取り乱すべきではない……頭の中でそんな風に処理した龍冶は、年相応の落ち着きを取り戻し、何事も無かったかのように、少女との会話を続ける。
「あ…ありがとな。いただくよ…」
恐る恐るコップに手を伸ばし、手に取ると一気に飲み干す龍冶。
【うん。普通の水だ…って、当たり前か……】
喉が潤い、冷静になってくると、彼は変に緊張していた自分が馬鹿らしくなってきた。
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