序章

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そう…例えば、何らかの理由で、執筆が中断され、本が未完のままになってしまった場合。 著者の想いは、その本に受け継がれる事は無く、著者の想いはそこで立ち消えてしまうのです。 そういった場合、その未完の本には、別の想いが込められてしまうのです。 著者の無念、絶望、怒り、憎しみ…… そういった負の感情は、徐々にその本を蝕み続けるのです。著者がその本に込めようとしていた本当の想いを食い潰すかのように。 そういった本を、私達の間では“悲本”(ひほん)と呼んでいます。 読んで字の如く…本当に悲しい本なのですよ…… そして、ここは、唯一そんな“悲本”…つまり、未完の本だけを保管している図書館です。 ……そんな、図書館聞いたことが無い? えぇ、まぁ、それはそうでしょう。普通の方は来ることすら出来ませんから。 まぁ、その話は追々するとして、今日はこの辺までにしておきましょうか。 そろそろ、“あの方”も来るようですし……
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