第一章

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初夏。 うだるような暑さの中、太陽を背に、一人の少年が汗を垂らしながら歩いていた。 芥川 龍治(アクタガワ リュウジ)、16歳。地元の高校に入りたてで、まだ日も浅い。 彼の名前を聞いた瞬間、あの有名な作家を思い浮かべた人は少なくないだろう。 同時に、名前が似ているんだから、彼もさぞかし賢く、文学的な人間なのだろうと考える人もいるかもしれない。 しかし、彼はお世辞にも文学的な人間…とは言い難い風貌をしていた。 髪は茶色に染められており、ワックスを大量に使って逆立てられている。耳にはピアス。また、左右の指には鈍く光る指輪が2~3個はめられていた。 典型的な不良のような風貌をした彼は、中身もまた、典型的な不良のようであった。
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