それは焔の中で

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「………こりゃあ、王女連れてこなくて正解だったな」 俺は火の海を掻い潜りながらエスペランドを探したが、完全に見失ってしまった。 「おおうっ!」 燃え尽きた家などが倒壊し、大小様々な破片を降らせる。 「……早く離れねーとな。たく、あのガキは何処に---」 ある人影を発見し立ち止まる。 「あいつはぁ---!!」 「………」 そこには膝を着いて頭を抱えたまま動く気配のないエスペランドがいた。 「---エスペランド!」 「………」 俺は急いで近づき怪我の有無を確認する。 「ここも早く逃げねぇとマズい。怪我がねぇなら行くぞ!」 「………………母さん……」 ポツリ、とエスペランドはそれだけ呟いた。 「!?おい、エスペラ---」 話し掛ける途中で理解。エスペランドの視線の先。 「…………」 そこには崩れた建物。瓦礫の量から大きな建造物-つまり村長邸だと推測。 だがそれを認識するより早く、一つの事実が俺の思考を揺さ振る。 「誰かは知らんが……。無礼(なめ)たマネしやがる」 血に塗れ、骨を突き出し、右手足を損失したまま無惨にも横たわるソレは--- エスペランドの母、ヒルダ・ヒューナーだった。
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