それは焔の中で

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「…………」 「…………」 掛ける言葉がない。言葉を掛ける余裕もない。 故に俺は感情を飲み込み、エスペランドの胸ぐらを掴み互いの額がぶつかる程顔を近付ける。 「-イッ!」 「このまま残るか?それとも着いてくるか。どちらか選べ、時間がない」 「ギリッ!貴方に……!」 「俺の気持ちがわかってたまるかってか?知らねぇよ。てめぇの気持ちなんざ。………もっとシンプルに聞いてやろうか?生きるか、死ぬか、さっさと決めろ。恨み言だろうがなんだろうが、ここから出ていくらでも聞いてやる!!」 「………」 「エスペランド・ヒューナー!!!!」 「……せめて母さんの周りの火だけでも処理させてください」 虚ろだった目に僅かだが生気が灯る。 時間はないが、俺は胸ぐらから手を離しながら頷く。 「わかった。早くしろよ」 「……ありがとうございます」 「消音の白銀。白の情界。全てを眠りへと誘う世界を顕現せよ」 エスペランドから流れ出る魔力は、雪のように輝く白。エスペランドの周りを渦巻くそれに幻想的なものを感じさせる。 「---『アイス・エイジ』!」
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