それは焔の中で

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エスペランドが呪文を完成させた瞬間。 -------ブオッ! 灼熱の炎界が凍える氷界へと変貌した。 さっきまでの騒音が嘘のように静まる。 「母さん…ごめん。でも必ず戻ってくるよ」 「………」 エスペランドはヒルダに近づき、その見開かれたヒルダの目をソッと閉じた。 「行きましょう」 「ああ」 ゆっくりと立ち上がる少年の目には、雪原には似合わぬ熱い何かが揺らめいていた。 「やっぱさっきの魔法は使えねぇのか」 「ええ、僕の魔力もアレで打ち止めです。ですから、生存者をあそこに誘導します」 俺とエスペランドは、再び灼熱の世界を駆け抜けていた。 「オーケー。おっと」 今は村の商店街を生存者探しながら走っている。 ………それ以外の状況説明は正直勘弁してほしいね。 「エスペランドじゃないか!」 「おばさん!無事だったんですか?!」 「私が簡単に死ぬもんかね!」 昼間の雑貨屋のおばちゃんは所々火傷を負っていたが無事だったようだ。 「よかった!村長邸に安全地帯を作りました!そこに向かってください!」 「さすがヘンリーとヒルダの息子だねぇ!わかった、ありがとよ!」
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