それは焔の中で

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そう言っておばちゃんは村長邸へと避難して行った。 「ここら辺はもう探すのは無理だ。俺達も一度戻るぞ」 「でも、まだ他にも…!」 「煙も酷い。これ以上は魔法を使えねぇ俺達じゃ危険だ。具体的に言えば後数分もすりゃあ新しい焼死体が2つできあがっちまうくらいにな」 食い下がるエスペランドに、事実を告げる。このまま煙を吸い続ければ、確実に二人とも動けなくなるだろう。一度戻って対策を考えなければならない。 「……くっ!」 渋々と言った様子のエスペランド。状況を把握できるくらいは冷静なようだ。 「……俺達にできるこたぁ少ねぇ。その少ない一つは、そいつらの無念の分まで死なねぇこった」 「…………」 「じゃ、戻るか。何人かは気付いて避難してっかも知れねぇしな」 「あっ!アリートさん!」 村長邸に戻る途中、突然エスペランドが叫ぶ。 「あれを視てください!」 その視線の先にはエスペランドと同じくらいの少女。木材の下敷きになったらしく、左手が抜け出そうと必死になって動いている。 「チッ!」 俺達は急いで少女へ近づこうするが、炎が激しく行く手を遮る。
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