広島に上京しての出会い

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「………30円とレシートです」 彼の手のひらに小銭をおいた。 その時私の指が少し当たった。 当たった瞬間手のひらに虫が落ちた来たように手を引っ込めた。 小銭が地面に落ちる… 「あ、すいません………」 焦って小銭を拾う。 「なにやってんだ。それでもキャッチャーか!」 と天谷がいじる。 「お2人さん、もし良ければサインもらえますか?」 いつから色紙を持って居たんだろうな。店長が色紙を両手に持っていた。 「俺いいけどこいつは止めた方がいいですよ。こいつ二軍行きですから」 高野君が控え? 少し意味が違うが私はそう思った。 「でもいずれ活躍する選手になるんだし」 「店長さん知りませんよ。高野サインしたれ」 「はい」 1つの色紙に2人のサインが記された。 「あ、もうあがっていいわよ。ごめんね」 「いえとんでもない。失礼します」 「高野、行くぞ」 2人と一緒に出た。 失礼しますと2人に言って別れようとした。 「あの………」 振り向いたら高野がいた。 「俺……高野風人です」 「は、はい………」 「あの………また来てもいいですか?」 子供みたいな言い方に私は微笑んだ。 「はい。お待ちしてます」 と頭を下げた。 そして、別れた。 その時の私はきずいていなかった。 あの高野風人が私の将来の夫になる人だと言う事も 私が『プロ野球選手の妻』なる事を想像もしていなかった。
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