第零話

2/5

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
誰もいない観客席。 寂れているわけでもないが、けして賑わっているわけでもないらしい。 「ようこそいらっしゃいました」 幕が音を立てながら上へ消えていく。 ステージの上に立つのは、三人の少年。 「ようこそ、我が劇場へ。本日は劇場支配人より、手紙を預かっております」 観客席から見て一番右端に立つ、黒髪でまるで三本の角があるかのように髪がピンと立つ少年が、軽いお辞儀をしながら言う。 そして、横に立っている、同じく黒髪で、少し髪が跳ねるような感じの、まだ幼さの残る少年をチラリと見る。 幼さの残る少年は、一歩前へ出て、手紙を読み始める。 「本日は我が劇場へようこそいらっしゃいました。 私は支配人の蒼空鳥栖と申します。 劇場は小さいですが、劇団員はとても優秀、どんな役でもこなします。 しかし、それは台本があること前提。 我々には台本がありません。 台本がなければ、なにも演じることは出来ない。これには私も、劇団員も困ってしまいました」 ここまで言い終えると、深くゆっくりと呼吸をした。 そしてまた、支配人から渡されたという手紙の続きを読み始める。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加