第零話

3/5

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
「そこで思いついたのが、観客の皆様からお題を頂こうと。 我が劇団員達はとても優秀で、中には台本を書くのに秀でている者もおります。 ですから、お題さえ頂ければ、皆様の望むどんな物語でも、彼らは演じることが出来るのです。 見に来てくださったお客様、どうか我々に、演じるための台本を……」 深々と頭を下げた後、幼さの残る少年は後ろへ下がる。 それと同時に、最初の少年によく似た、真紅の瞳の少年が前へ出て話し始める。 「支配人はあぁ言っておりますが、我々はとても未熟です。 言葉回し、口調、その他おかしいところがあれば、すぐに指摘していただければ幸いです。 しかし、『批評』と『中傷』は全く別物でございます。 中傷と取れる発言は、すぐに通報させていただきますので」 真紅の瞳の少年は妖しく笑うと、先ほどいた位置へと戻っていく。 『それでは皆様、楽しんでいってくださいね』 誰の声かもわからない声が、劇場内でこだまする。 そのときにはもう、三人の少年の姿は見当たらなかった。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加