イエス・キリスト

十字架

死への恐怖を紛らわすために…

そして死刑執行人はイエスの手と足に特大の釘を打ち始める。

ガンッ、ガンッ、ガンッ！

「ぐっ！」

イエスは釘が打ちつけられるたびに悲痛なうめき声をあげた。

それを見ていた信者はあまりの酷さに目を背ける。

釘を打ち終わると死刑執行人は、十字架を天高く上げた。

民衆はいいぞいいぞとはやしたてる。

死刑執行人はつまらなそうにあくびをした。

そして容赦なく火を放つ。

十字架の根元に置いてあったわらに引火し、勢いよく燃え上がった。

「うっ、うぐぅ」

イエスは手足の痛みに加えて下からの耐え難い熱さに顔が強張った。が決して弱音は吐かずその顔を民衆に向けた。

すると一人の信者と目が合った。

イエスは軽く頷く。

そしてイエスは、この世の最後の一声にこう言った。

「完了した」

後にこの言葉は神様の罪への責めが満たされ、私達の救いが完成したことを告げる声と伝えられた。