いち

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店主が、木の壁に立てかけてあった角材を振り上げる。 あたしは、それを目で追いながら訪れるであろう死を覚悟した。 「…死ねっ。」 店主が振り下ろした。 ―っ! 「おーい!店主はいねぇのか?」 ───ピタッ あ、あれ? うっすらと、あたしは目を開いた。 あたし生きてる! 店主は店先から聞こえた大きな声に、振り下ろした手を止めて廓の中へと戻ってゆく。 「へい、これはこれは原田はん。いかがなされました?」 「土方さんがよう、明後日ここで宴会を開きてぇみたいなんだが、開けといてもらえねぇか?」 あたしは遠くで聞こえる二人の会話を耳にしながら走り去る。 …原田さん。 あの人が来なかったら…。 あたしの命はなかったな。 よしっ!あたし原田さんに、ぜーたい恩返ししてみせるっ! え、単純? だってあたしは、自由気ままな野良猫だもん。 あたしは、青く澄んだ空を見上げ決意した。  
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