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店主が、木の壁に立てかけてあった角材を振り上げる。
あたしは、それを目で追いながら訪れるであろう死を覚悟した。
「…死ねっ。」
店主が振り下ろした。
―っ!
「おーい!店主はいねぇのか?」
───ピタッ
あ、あれ?
うっすらと、あたしは目を開いた。
あたし生きてる!
店主は店先から聞こえた大きな声に、振り下ろした手を止めて廓の中へと戻ってゆく。
「へい、これはこれは原田はん。いかがなされました?」
「土方さんがよう、明後日ここで宴会を開きてぇみたいなんだが、開けといてもらえねぇか?」
あたしは遠くで聞こえる二人の会話を耳にしながら走り去る。
…原田さん。
あの人が来なかったら…。
あたしの命はなかったな。
よしっ!あたし原田さんに、ぜーたい恩返ししてみせるっ!
え、単純?
だってあたしは、自由気ままな野良猫だもん。
あたしは、青く澄んだ空を見上げ決意した。
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