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確か叔父さんは、穣さんが夕飯を用意してくれると言っていた。
(机の上か?)
大きいL字ソファ越しに机の上を見ると、そこには小夏の好きなお握りがラップに包んで置いてあった。
この豪華な部屋にその物は異質で、とても浮いている。
「!お握り…おかかが良いなぁ」
「俺は鮭が良い」
「うわぁっ!!」
自分以外誰もいない筈の部屋で、呟いた独り言に下から返事が返ってきた。
驚いて下を見ると、ソファに仰向けで寝転がっている、青いネクタイの青年と目が合った。
「今…何時?」
「し、七時半過ぎ、で…す」
青年はボーッとした目を擦りながら、ムクッと起き上がると、平然とした態度で話し掛ける。
欠伸をして伸びをする青年を見ながら、小夏は聞かれた質問に答えた。
「もうそんな時間か…よく寝た…う~っん。お腹…減った。うん」
ボソッと話しながら机の上のお握りを見付けた青年は、小夏とお握りを数回交互に見て軽く頷く。
右の前髪が左右非対称に長くて左目しか見えない彼は、サラサラの黒に近い緑の短髪に深緑の瞳。
小夏がまだ固まっているのを他所に
「…いただきます」
青年は手を合わせて呟くと、三つあるお握りの内、右端の一つに手をつけた。
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