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「おい、それはわ…俺のだ!!」
梅干しか…残念。と言いながらも、もう一つのお握りに手を伸ばす青年。小夏は慌ててその手首を掴んだ。
「…まだ、お腹空いてる」
「俺もだ!!…それよりお前は何者だ。ここは俺の部屋で、俺以外は使っていない筈だが…?」
物欲しそうな目をこちらに向けてくる青年を無視し、小夏は相手を威嚇する。
二人は暫く睨み合い。と言うか見詰め合った後、根負けした青年が伸ばしている手に込めていた力を抜いた。
「…何者…うーん…有名人?」
「………名前は?…」
返ってきた頓珍漢な答えに小夏はめげず、質問をする。
「あぁ…名前は峰岸愁助(ミネギシ シュウスケ)」
そっちだったのか!みたいな声を出した峰岸は、無表情のまま左手の拳を掴まれていた掌にポンと乗せる。
古いリアクションを見せた峰岸は、スッキリ感を醸しながら又もや手をお握りへと伸ばす。
ガシッ
「…何故ここにいる。そして食べるな」
小夏は空かさずその手首を再び掴み、質問を続ける。
残念そうに眉を少し下げた峰岸は、手を伸ばして掴まれた格好のまま口を開いた。
「…静かに寝れるとこ探してて…ニコニコした、知らないお兄さんが入れてくれた…うん。お陰でよく眠れた」
軽く頷いて思い出すように話した峰岸を横目に、小夏は薄く苦笑いを浮かべた。
穣さん…何故、勝手に知らない人を他人の部屋に入れた…そしてお前も何故入る。
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