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「はぁ………あ、また溜め息出た。…じゃなくて、これは俺の夜ご飯なんだ。おま…峰岸は生徒カード持ってないのか?それで食事は食べれるんだろう?」
「んー…持ってるけど…食堂行くと、煩いから…うん。あんまし行きたくない」
小夏の質問に…分かりにくいが、少し悲しそうな顔をして答えた峰岸。
何か事情がありそうだな…と思った小夏は少し悩んだ後、机にあるお握りを一つ峰岸の手に乗せた。
「もう一つだけだぞ。足りないなら食堂に行ってこい」
峰岸の隣。空いているソファの上に座り、最初で最後のお握りを一口かじる。
「………うん。ありがと…」
暫く目をパチクリさせていた峰岸は、黙々とお握りにかぶり付く小夏を見て微笑むと、自分もお握りを口に運んだ。
「…峰岸…お前はいつになったら自室へ帰る…一体いつまでここにいるつもりだ…」
自分の部屋のドアノブに手をかけた小夏はその格好のまま、背中に刺さる視線の主に話しかけた。
「ねぇ。……俺、ここにいても良い?」
「…は?」
返ってきた想定外の答えに小夏は顔だけ振り返る。
「部屋に帰りたくない…ここで、寝ても…良い?」
振り返るんじゃなかった…
そこには、ソファ越しにこちらを見詰める捨てられた子犬のような目をした峰岸がいた。…オプションに、潤んだ瞳としょげた犬耳まで見える。
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