寮で捕まりまして

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  「…えと、ごめんね?…」 「………」 顔を洗う小夏の横から、峰岸が覗き込むようにして話しかけてきた。 小夏の機嫌が悪いのに対し、謝っているのだが、本人は先程のことを全く覚えていないらしい。語尾に疑問符が付いている。 タオルで顔を拭いている最中の小夏は、くぐもった声で吐息した。 「分かった、誰だって人肌が恋しいときはある。もう良いから、お前は朝ご飯を食べに行ったらどうだ?」 はぁ、朝から無駄な力を使ってしまった。 次からはちゃんと鍵をかけよう… 「…………に…こ…」 「…ん?何か言ったか?」 心の中でまで溜め息を吐いて考え事をしていた小夏は、逃してしまった峰岸の呟きを聞き返した。 顔からタオルを離し、聞きやすいように少し顔を前のめりにさせる。 「一緒に行こ…」 「え?…どこへ…?」 「…朝食」 「朝食?って…え、ちょっ…わぁ!!」 ぐいっ 峰岸は小夏の腕を急に引っ張ると、自分の腕に絡めて歩き出す。 今気が付いたが、峰岸は意外と背が高い。180cmくらいだろうか? 小夏は162㎝と低い方ではないが、峰岸の腕を絡めるには些か高さが足りない。 肩を引き上げられているような間抜けな体制になってしまった小夏は、反抗する暇もなく、引きずられるようにして部屋を出ていった。 「ちょっどこっ、止ま…取り敢えず腕離せぇぇえっ!!」 バタン 叫び声を残して。image=387828904.jpg
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