変人に出会いまして

2/13

658人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
  「……無駄すぎる…」 どーんと言う効果音が付きそうなくらいに堂々とそびえ立つ壁を見て、小夏は据わった目して呟いた。 その体勢は無様にも未だ片腕が不自然に上がったままである。 絡める腕の主、峰岸に連れてこられたのは二階。食堂と思われる扉の前。 食堂にしては立派すぎる扉に呆れを通り越し、一周回って呆れを覚えた小夏は、どうせ秋斗さんの趣味だろう。勿体ない。と叔父の悪趣味に吐息した。 「…なるべく、見付からないよう…面倒臭いから」 「は?面倒臭い?」 「…いくよ」 「おい、峰岸!説明しろっ!」 ガチャ… 意味深な言葉を発しながら全く説明しない峰岸は、小夏を無視して扉を開けた。 「峰ぎむぐっ!!」 訳が分からない小夏はもう一度問いただそうと名前を呼ぶが、その声は峰岸の手によって口を塞がれ、最後まで発することは出来なかった。 その体制のまま食堂に入った二人はなるべく端に寄り、コソコソと人に気付かれないよう前に進む。 進むと言っても、小夏はほぼ峰岸に引き摺られているが…。 (中は割りと普通だな…) 口を塞がれている小夏は大人しく、心の中で感想を言った。取り敢えず静かにした方が良いのだろう。 広いフロアに幾つかの白い丸テーブルと椅子。そのデザインは何処と無く高級そうだが、取り分け変わっているわけではない。 向かって右側に注文するらしき場所があって、その奥には厨房があり、ガラス越しにチラッとシェフが忙しなく働いているのが見える。 そして流石、全寮制。夏休みなのにも関わらず、食堂にはそこそこの人が出入りしていた。 だが、 (男ばかりなのは何故だ…?) 流石、全寮制“男子校”。それを知らない小夏は一人不思議に思った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

658人が本棚に入れています
本棚に追加