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気配を殺して進み、もう少しで目的地(注文する場)に辿り着きそうになったとき。
「あ~っ、シュウちゃんじゃ~ん♪」
そう言って、口元にあるホクロが特徴的な男の人がこちらに声をかけてきた。
その声に反応してビクッと体を震わせた峰岸は、無視して子夏をその人から隠すように、自分の影へと小夏を引っ張る。
小夏はいきなりのことに驚きながらも、そんな峰岸の行動を不思議に思い覆い被さっている影を見上げた。
「?峰ぎ…」
「え!?シュウ様!?」
「キャーッ!!シュウ~~~っ!!」
「シュウだぁーっ!!シュウーっ!!」
「シュウ様ぁぁぁああ!!」
名前を呼ぼうとした瞬間。言い切る前に、男だらけの食堂のあちこちから黄色い叫び声が飛んできた。
あまりの煩さに、小夏は慌てて耳を塞ぐ。
ぅ、うるさい…
「……………チッ」
微かに頭上から聞こえてきた、低い舌打ちの音。小夏は目線を上に戻すと、峰岸は顔を不快感一杯に歪めていた。
この状況から察するに“シュウ”とは峰岸のことで、騒がれているのは峰岸か?
本人は気分悪そうだが…。
「お~お~。シュウちゃんは相変わらず人気者だね~♪羨ますぃ~」
「……駒宮、行こう」
「ぇ?あ、ああ」
集まってくる人の群れに、話しかけてくる男の人をまたも無視して、峰岸は小夏の腕を引っ張る。
状況がいまいち把握できない小夏は気の抜けた返事をして、男の人をチラリと見た。
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