手紙が届きまして

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次の朝、玄関から出ると馬鹿デカイと言うか、長い車が家の前に止まっていた。…こんなのどうやって運転してきたんだ…?このグネグネ道を…。 手荷物を隣に置き、ポカンとする私を他所に段ボールに詰めた荷物は次々車の中へと消えていく。 「御迎えに上がりました小夏譲。御父上春斗様の秘書、穣(ユズル)と申します」 「……はあ」 しなやかに御辞儀をする執事のような格好の穣さんはこちらにニッコリと微笑む。 目の前のことに驚きすぎて、私の口からはなんとも情けない返事が出た。 「咲太郎様と梅乃様、お久し振りで御座います。御元気そうで何より、父が案じておりました」 「うむ。久し振りじゃ」 「貴方も御元気そうで何より」 「!じぃばぁ知り合いか?」 自分の隣で挨拶する二人に聞くと、どうやら穣さんとは親からの付き合いらしい。 それより父母って何者?こんなデカイ車を迎えに寄越すとは…それより秘書って、あの人達何の仕事していた? 「春斗様は楠財閥の社長、小春様は世界的ファッションデザイナーで御座います」 「え!?何故…」 「御声に出されて御出でしたよ」 (……恥ずかしい…) 相変わらず笑顔を崩さない穣さんに対し、小夏は恥ずかしさを苦笑いで誤魔化す。 それにしても、あのヘタレな父が財閥の社長だったとは…親の仕事に興味がなかったとは言え驚きだ。母がファッションデザイナーなのは何と無く納得、通りで変な服をたまに送ってくる訳だ。
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