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「では、そろそろ参りましょう。御時間になります」
「あ…その…」
「小夏ーーー!!!」
穣さんの言葉に小夏が渋っていると
「雄輝(ユウキ)!」
幼馴染みの小野田雄輝が走ってきた。
このド田舎の中学校は全校五人、小学校も兼ねて十三人。その中で唯一同学年の雄輝は小夏の悪友的存在だ。
「小夏!転校って本当だったのかよ!?」
「あぁ、東京の閏月学院と言う所に行くらしい。私も昨日知った」
「き、昨日知ったって…お前の親御さん又とんでもないことを…」
「はは、全くだ…」
急なこと過ぎて皆にちゃんと挨拶もしてない…それが少し気掛かりで先程、小夏は返事を渋ったのだった。
(お前だけでも見送りに来てくれて嬉しいよ…絶対言わないけど)
「雄輝…見送りありがとな」
「あ、あぁ。たまには帰ってこいよ!!」
「それが全寮制らしくてな。中々帰れんようなんだ…まぁ、ちょくちょく電話するよ。七海達にも言っといてくれ」
「そうか…分かった」
眉を下げる雄輝に苦笑いしながら、時間が迫ってきた為私は車に乗り込んだ。
「では、参りましょう」
出発して窓から外を覗くと雄輝が何か叫んでいたが、私には聞き取れなかった…。
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