メイドになりますか?

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ふと、教会のような建物が目に入った。 少し古びているようなその教会の敷地に入り、とりあえず道を聞くことにした。 「すいませ…」 言いかけた時、目の前に拳銃を突きつけられた。 「貴様、よそ者だな。」 格好はカトリック教会にいるシスターの服装。 しかし、中身は確実にシスターではなく“ブラザー”。 2メートルはあると思われる身長とガッチリと鍛えられていそうな体格。 ほのかに香る火薬の匂い。 額の傷は彼の人生を物語っているかのようだ。 「あの…道を聞きたいんですけど…」 人間は極限の驚きを与えられると、動揺することを忘れてしまうのかも知れない。 男はフンッと鼻をならした。 「お尋ね者か。」 「違います。言葉は間違ってませんが、その言い方じゃあ意味が違ってきます。」 よく見ると、彼の目は綺麗な青い瞳で金髪だった。 彼は拳銃をおろした。 「で、貴様は何を聞きたいんだ。」 「この“アンジェリーナ邸”というところに行きたいんです。」 アンジェはチラシを男に見せた。 「ほぉ…」 男は教会の隣の林を指差した。 「そこの林を抜けると丘がある。その先にあるはずだ。」 「あ、ありがとうございます!」 アンジェはほっとして林へ向かおうとした。 「だが一つ警告しておく。」 男は相変わらず硬い表情で言った。 「林の中に川があるんだが…」 アンジェは唾を飲み込んだ。 「川には河童が住んでいる。尻子玉を取られんよう気を付けろ。」 「…カッパ…?寿司とか握ってくれるんですかね?」 「何をいってるんだ。奴は橋の下で人間が通るのを待ち構えている。」 アンジェは話が上手くのみ込めず、とりあえず「わかりました」と言ってその場を立ち去った。 林の中に入ると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。 ぶるっと身震いをする。 河童はどうかわからないが、確かに何かが出てきそうな場所だった。 「河童かぁ…人語しゃべるかなぁ?」
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