メイドになりますか?

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アンジェは絶句していた。 「道が…長い…」 河童の説明とは裏腹に、思ったより道が長かったのだ。 「交通不便すぎるよ…。通えるのかな?それとも寮なのかな…」 家には当分帰れない覚悟が必要だと悟った。 ―――30分経過――― 坂を登りきるとずっしりと大きな木があり、その先に豪邸が見えてきた。 今まで見たこともないくらい大きな建物にアンジェはただただ、驚いていた。 「…クッ」 突然、どこからか笑う声が聞こえてきた。 辺りを見回すが、何処にも人影らしきものはない。 「あはははははっ」 アンジェははっとして、上を見上げた。 丁度その時、何かが木の上からザザッと降りてきた。 「きゃっ」 反射的に目を瞑ったアンジェは、ゆっくり目をあけた。 白っぽい不思議な髪色の青年が腹を抱えて笑っていた。 「腹痛てぇーっ、くははっ。」 アンジェは目をパチクリした。 「お前のアホ面、最高に笑える。」 先程、アンジェが豪邸を目にしてあんぐりしていた顔に笑っているようだった。 アンジェはそれに気がついてむくれた。 「そんなに笑わなくてもいいじゃないっ!」 アンジェは青年を睨み付けた。 「そんなに怒るなよ。お前、あそこに用があんのか?」 「そうよっ、悪い!?」 「落ち着けよ、短気だなぁ。」 青年は楽しそうにアンジェを見ていた。 アンジェは怒りでわなわなと体を震わせていた。 「早く行かないと大事な用事に遅れるんじゃねぇか?」 「言われなくたってっ…」 アンジェはプイッとそっぽを向いて歩き出した。 相変わらず青年は口端をつり上げて笑っている。 初対面にして最悪な出逢い。 アンジェは疲れも忘れて早歩きで目的地へと向かった。
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