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つまりは…向こう側までの「距離」と、その距離を移動する為に費やす「時間」など無い場所と言う事か、もしくは俺が長く感じてるだけで、向こう側は数秒単位しか経過していないとか…そんな感じの理屈であろう。
とにかく俺は、この気味の悪い「道」を抜けて、早く「向こう側」へと辿り着く為に、先を急ぐ事にした、ただし…履き物がスリッパなので、どうしても歩くペースを上げにくい。
(見えたぞ)
黙々と早足で歩いていると、突然「アサメイ・ビーナス」に宿る龍神の分霊が声を出し、俺に「向こう側」への「出口」が見えた事を告げてきた、俺は足を止めて「道」の先の方を見るべく顔を上げた。
『……あれが、出口ですか?』
ただ周りが赤く、道なりの洞穴のような空間の先に、ポッカリと壁に穴が開いたようにして「風景」が見えるのだ、もちろん病院の内部だと思われるが、まだ離れていて、病院の廊下なのか、それとも部屋の中なのかは判別が出来ない。
ともあれ、出口が見えたなら一刻も早くたどり着きたい、俺は止めていた足を再び動かし、先ほどと同じく、早歩きで移動を開始した。
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パタッ。
「道」から出た俺は、スリッパで床を踏みしめた音を響かせながら、目的地でもある「異界化」された中に作られた「異界」へと、ついに足を踏み入れた。
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