98人が本棚に入れています
本棚に追加
まず初めに触れたのは「肉」の感触、一瞬だが、受肉に匹敵する程まで、存在力を持つ妖魔の死体か何かと思ったので、俺は口に加えた「アサメイ・ビーナス」を右手に持ちなおし、万一の為に備えだ…が「肉」に手を触れた感触は「非常に柔らかい」感じだ、でも体温は極端に低く、死にかけた動物を連想させた、それに妖魔ならば死体となる以前に、かき消えてしまう。
俺はそのまま「肉」に左手を当てたまま、上…つまり倉庫の出入り口の方へと手を撫でるようにして這わせてゆくと、布の感触が有った。
『…布?……ん、これはまさか服か?』
指先で摘むようにして、軽く「布」を引っ張ると、やけに伸びた、それに動かすと何かピラピラと動く感じがする。
『…まてよ、じゃあ「これ」…人か!?』
妖魔が「服」を着るとは聞いた事が無い、いや…俺が無いだけで「服」を着る妖魔も居るかもしれないが、ともあれ「人」だった場合の事を考えて、再び「アサメイ・ビーナス」を口に加えてから、両手を「赤い靄」の中に突っ込み、それを掴んで持ち上げる。
『ん?………んぐっ!?』
俺は思わず吹き出しそうになった、口に加えた「アサメイ・ビーナス」を落とさないように加え直しながら、両手で持ち上げた「もの」を見た、それは…
『あふぃ?!(足?!)』
靴下を履いた足、それが俺が両手で持ち上げた「もの」だった。
俺は素早く持ち上げた足を下ろし、場所を移動してから、再び両手を「赤い靄」の中に入れ、触れた「もの」…いや、人間の上半身だと思われる部分を掴んで、引っ張り起こした。
『な……かひゃはん!!(訳・な……加奈さん!!)』
「アサメイ・ビーナス」を口に加えているので、ちゃんとした言葉になってないが、俺は起こした相手を見ながら声をかけた、だが、加奈さんは意識は無く…さながら死体のように重くて冷たい、一体何があったんだ?。
『ひゅーひんはん、かひゃはんは、ふひはんへふか?(訳・龍神さん、加奈さんは無事なんですか?)』
(どうでも良いが、我を口に加えたままでしゃべるな、たわけ者……娘を壁に寄りかからせろ、我が様子を見る)
龍神の分霊の言葉に従い、俺は加奈さんを出入り口近くの壁まで引っ張り、背中を壁に添うように寄りかからせ、俺は「アサメイ・ビーナス」を口から取り、右手に持って、深い緑色のオーラを放つ、ステンレス鋼で出来た刃の切っ先を加奈さんに向けた。
最初のコメントを投稿しよう!