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(後で我を清潔な布で拭くのだぞ、お前の唾液が、我の器である金属の胴体に付着しているのでな)
『あ、ああ、了解した』
口に加えていた上に、喋ったりしたから、少しばかり「汚れて」しまっている;確かにこれは失礼であろう。
俺の返事を聞いた「龍神の分霊」は、「アサメイ・ビーナス」の中から力を放ち、加奈さんの全身に緑の霊光を浴びせてゆく…その時、チカッと赤黒い光が見えた、加奈さんの右肩から左脇にかけて、斜めの一線に瞬いたのだ。
『今のは…?』
(この娘の霊体に負わされた「霊傷」だ、かなりの重傷だぞ、霊体のみならず肉体的な生命力まで、ほぼ六~七割近くも奪われている)
『何いっ!?』
(このままでは半時も保たずに死ぬな)
『どうすれば良いんです?』
(ふむ…………………………………そう言えば、お前は「ルナライト」が使えたな?)
『…「ルナライト」?一応は使えるけど、それが何か…役に立つんですか?』
「ルナライト」はヒーラー達が使う、エネルギーの一つで彼等から「アチューンメント」と呼ばれる方法で、エネルギーを受け取る事で使用可能になる、癒やしの力だ、だが、俺は本来ならば扱える筈の「遠隔ヒーリング」が出来ず、他者に「アチューンメント」を施すのも困難であり、ただ自身に使うのみである。
(「ルナライト」は精神的な癒やしのエネルギーであろう?肉体的な生命力の補充は無理だが、この娘の霊体に負った傷ならば応急処置にはなる)
『ああ、なるほど』
確かにそれならば…可能かもしれない、ただし今まで散々に言ってるが、魔術を含めた霊的な技術、霊的な力は弱く、ハッキリ言って非才な人間だ、それが証拠に魔術もヒーリングも、効果は「脆弱」としか言いようがない。
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