98人が本棚に入れています
本棚に追加
『近くに黒澤さんが?』
(うむ)
俺の言葉に短く返事をする龍神さん…なるほど、黒澤さんは「霊薬」を作れるんだった、そう都合良く、今回「霊薬」を持って来ているとは言い切れないが、あの荷物の量からして、持ってきている可能性は十分にありうる。
『じゃあ、さっそく行くとしますか…しかし…』
壁に寄りかからせたままにしている、加奈さんを見ながら言葉を止めた、いくら彼女がそう大して重くはないにしても、それはあくまでも平均的な筋力を持つ人に限っての話…筋力や体力が平均以下の俺には、加奈さんを力任せに運ぶのは、これがまた中々に厳しい…
『背負っていくのは…ちょっとな…』
もしかすると一番最適な方法かもしれないが、万一…加奈さんを背負っている時に、この「異界化」された空間に潜んでいるであろう、悪霊か妖魔などに教われたら、俺にはとても対処が出来ない、加奈さんを背負いながら、攻撃を避けるなんて高い運動能力は無いし、最悪アサメイを取り出す「間」すら無く、あっさり負けてしまうと容易に想像がつく…と、なると。
『引きずっていくしかないか』
加奈さんをズルズルと引きずって移動すれば、素早く彼女から離れてアサメイにしろ、他の魔術具にしても取り出せるだろうし、自由に動き回れる…唯一、少なくとも俺が思い付く限りで問題があるとすれば、床に放置した加奈さんが戦いの最中、俺か悪霊に踏まれる危険がある事だ、悪霊は物理的なダメージは与えられない、けど気を失って無防備な状態にある加奈さんを「踏んだら」、ただですら「霊傷」を負っている上に、更なるダメージが霊体に加わってしまう、そうなれば「致命傷」となりうるかもしれない…
加えて俺が動き回っている最中に、加奈さんを踏みつける可能性もある、悪霊と違って俺が踏みつけたら、当たり前だが彼女に肉体にダメージを与えてしまう、それに戦いの最中で悪霊や妖魔に、アサメイなどを手から弾き飛ばされたら…そこに運悪く加奈さんが居たら、…全く洒落にならない結果となるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!