準備中

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病室の出入り口の近くにあるベッドに腰をかけ、見張りをしていた黒澤奈緒美が、眉をしかめた…何者かの気配が近寄ってきたからだ、だが、妖魔や悪霊のような邪悪な気配しないので、敵ではないと判断し、黒澤は自ら声をかけた。 『どなたです?』 『黒澤さん、も…持ってきましたよっ』 黒澤の声が聞こえたのか、赤い靄に満ちた廊下から彼女の名を呼び、返事をする声が聞こえてきた、そして、のたのた…とした亀のような足取りで、201号室の病室へと霧島沙耶が入ってきた、背中に一つ、両手でもう一つの大きな鞄をもって。 『まあまあ、そんな一度に…私の鞄も持ってきて下さいましたの?ありがとう霧島さん』 黒澤は、病室の真ん中までやってきた霧島が、両手で持っていた高級な革製の鞄を床に置いたのを見て彼女に礼をお言った、それが黒澤の荷物が入った鞄なのだが、ビニール繊維を多様して作られている霧島の鞄とは明らかに品質差がある。 これが金持ちと一般人の差…と言う所だろう、だが霧島沙耶も木村翔と同様、その辺りには無頓着な所があり、品質が良いに越した事はないが、何より「自分にとって使いやすいのが最良」と言う基準の持ち主なので、気にもしない、綾崎なら「あーあ…部長はご立派な鞄だな…」とか思うかもしれないが。 『いえいえ、…よっと』 黒澤のお礼にニッコリと笑みを浮かべて応じた霧島は、自分の鞄を空いているベッドの一つの上にボスンと置くと、再び赤い靄が満ちた廊下へと出て行こうとする。 『ちょっと霧島さん、なぜまたここを出て行くのです?』 『加奈ちゃんが、私に割り当てた荷物は2つなんですけど、藪崎さんが3つなんです;いくら男の子でも、あんな大鞄を3つは…やっぱりキツいでしょうから、運ぶのを手伝いに行ってきます』 『綾崎さんが藪崎さんに、あの大きな鞄を3つも押し付けたと?…本人は何を運んでました?』 『自分の鞄と、ジュースやお菓子の入ったビニール袋を一つ…ですね』 『…全く…あの娘ときたら…;』
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