準備中

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山辺はガラス瓶の中から漂ってくる、異様な…苦味すら香りだけで味わえるがごとき臭気に、思わず顔を引いた、その瞬間…骨に達しているかもしれない程のダメージを受けている左腕に、鋭い痛みが走り抜けて苦悶した。 『この香りでは引くのは分かりますが、早く脇腹の「痣」を消したいでしょう?さあ』 黒澤も香りのキツさは知っているのだろう、だが、山辺に差し出したガラス瓶を一行に引く様子は無い、口を開けろとばかりに「さあ」と言ったまま動きを止めている。 『くっ;』 山辺は顔をひきつらせて固まったままだ、だが、なぜ彼が此処まで嫌がるかと言うと、霧島が何度となく霊薬を服用しているのを目撃しているからだ。 この1ヶ月間に十回にも及ぶ悪霊との戦いで、霧島がアサメイを含めた魔術武器を使い、接近戦をするのがスタイルだと知っている、だが、接近戦は敵とまさに「触れ合う」と言うものである、霧島がアサメイで切りつけ、それに反撃してきた悪霊に打撃を受けている姿は、何度も繰り返し見てきている、そしてその都度、彼女は「霊傷」とも言うべき「痣」が体中に浮かんでいた。 もちろん霧島は「痣」だらけ状態なのを嫌がる、自宅に帰ったら気になる男友達が隣の家に居るのだ、当然そんな「痣」だらけの姿なんて見せたくない、だから戦いの後で、霧島は黒澤に「良く効く霊薬はありませんか?」と訪ねる、「ありますよ、これでしたら一晩で「痣」が消えますわ」と差し出す、…まあここまでは良いのだが、その差し出された「霊薬」入りの、ガラス瓶の蓋を開けた時の霧島の表情は、例えるなら…「泣きそう」と言う感じの顔になる、そして口にするのを10分近くもためらってから、覚悟を決めたようにして霊薬を一気に飲み込んで行く… そして空になったガラス瓶を地面に置き、俯き加減だった顔を上げると、まさに「吐く寸前です」と言わんばかりに真っ青な顔になっており、目もどこか虚ろであった…、しばらくして落ち着いてきた霧島に、山辺が恐る恐る訪ねた所によると「…不味いの」と一言だけが返ってきた、他のコメントは一切ナシ。
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