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一方、山辺はトランプを各四種類をそれぞれに整理し、上着の左右にある内ポケットにいれた、もちろん彼の着ている上着は、黒澤によって聖別された「防具」であり、幾らかの霊的悪影響を防ぐ事ができる。
また、聖別したトランプのみでは心もと無いので、綾崎加奈が所持している「ヘマタイト・ボール」を貰う事にした、残念ながら左腕を負傷しているので、より強く打ち放てるスリングが使用出来ないので、トランプと同様…無事な右手で投げつける使い方になるが…
それぞれが準備を終えた所で、黒澤は更に自身と、山辺や女性患者にもペンダントタイプの護符を渡した。
『これがあれば、妖魔からの攻撃によって受ける「傷」も少しは軽くなるでしょう』
『ありがたく』
受け取った山辺は、さっそく首にペンダントタイプの護符を下げた。
『さて…と、あ、おばさんもペンダントを、きちんと付けられましたか?それは御守りですから、何の害もありませんですわ』
『ええ、ちゃんと』
そう言って女性患者は胸の当たりを手を当てた、そこにある…と黒澤に教える為に。
『そうですか、なら…おばさんは、何かあった時はベッドに下に潜るなりして、隠れて居て下さいね』
『ええ』
『…ところで黒澤部長、準備は良いとして、これからどうするんで?』
『先ずは……』
山辺の問いに、そちらへと顔を向けた黒澤が、何かを言おうとした…次の瞬間。
ビギィ!バチバチッ…………バリィィィン!!!
病室の出入り口から、先ほど…妖魔が襲撃してきた時と同様に、電流がほとばしるような激しい音がした、が、僅かな間の後…ガラスが割れるような鋭い響きの音を立てた…
と、同時に病室の出入り口、その左右に棺桶の釘で、壁に付けられていた護符が、二枚とも力無く床にパラリと落ちた。
『ま、まさか結界が破られたのですか?!』
驚愕する黒澤に対して、不気味にぐぐもった声で返事がかえってきた。
【クフフ…そうだ、オレたちにワ、破れないが…アンタが作った魔術具ならナ、ご覧のトオりさ、グフッ グフッ】
赤い靄の満ちた廊下から、ゆっくりと宙に浮いたまま、大きな黒豚の頭部が病室へ入ってきて、ニタリと黒澤達に微笑みかけた。
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