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キイッ…キシィ…
俺は薄暗い板張りの廊下を、霧島さんと2人で歩き回りながら、次々と部屋を見て回った、しかし室内には、古ぼけたベッドが並ぶだけで、何らかの手掛かりも無いし、かといって妖魔や悪霊の襲撃なとも一切無いままだ。
進展も、変化も無く…また脱出する為の、何らかの手掛かりすらも無い、ひたすら歩いているだけに過ぎない状況に、俺は少しだけ苛々していた。
『ねえ、木村君』
『ん?』
不意に、後ろから付いて来る霧島さんが、声をかけてきた。
『木村君は…藪崎さんと戦える?』
藪崎が「敵」だとしても「さん」付け呼びするとは、さすが霧島さんと言うべきか…ちなみに俺は既に呼び捨て状態である。
『……何故そんな事を?』
『…私は…短い間だったけど一緒に悪霊と戦ったりした人だし、いざという時に戦えるかなって』
『情がある訳ですか…』
『うん』
『まあ、気持ちは分からない事もありませんけど、向こうは現に「妖魔」をけしかけてきたし…完全に敵に回ってますからね、今の内に気持ちに整理をつけとかないと、いざという時に命取りになりかねないよ?』
『…うん…そうだよね』
若干暗い口調で頷く霧島さん、彼女にしてみれば藪崎は「戦友」とも言える人物だ、躊躇う気持ちを持つのは仕方ないが、向こうは霧島さんと同じとは思えない。
先ほども言った事だが、既に藪崎の刺客と思われる妖魔が襲いかかってきたのだから…
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