鴨頭の剣士…

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そうこうしてる内に、俺と霧島さんは廊下の最奥にあたる、突き当たりの部屋に到着した… 『ここで最後の部屋…だね』 『ああ』 これまで2人で歩き回ってきた、この木造の建物は明らかに古い病院だと思われる、今まで見てきた部屋の全てにベッドや、それらの部屋…病室に居たらしい患者の所持品などが置かれていたからだ。 ただ、そのどれにも手は付けていない、もしかしたら現状の「何か」を知る手掛かりなどがあるかもしれない、だが、勝手に他人の…恐らくは既に存在していないものだが、所有物を弄るのに抵抗があったからだ。 もし、この突き当たりに位置する部屋…多分、今までと同じ病室の類と思われるが、内部を見て何も分からないようであれば、通ってきた道を逆戻りしながら、各病室を調べようと考えていた。 『さて、入ってみようか』 『うん』 左横に立つ霧島さんに声をかけてから、俺は目の前の古びたドアのノブを掴んで回し、押し開いた… ギィィィ… 軋むドアの音が薄暗い廊下の中に響く、開かれたドアの向こうの部屋は、他の部屋とは少し違っている、ベッドなどもあるが、部屋の端に机があり、他にも薬品を入れた棚などが置いてある事からして、おそらく… 『診察室…かな?』 部屋には入らず、廊下から見渡せる範囲で見ていた霧島さんが呟いた。 『らしいね』 返事をしつつ、俺は病室…いや、診察室らしき部屋へと踏み込んだ。 『ふむ…』 先ほど説明した机や棚、診察に使うベッドはあるのだが、取り立ててめぼしい物は見られない、俺は机に向かい、その上にあった何枚かのカルテを見てみたが、学校の五教科に当たる勉強すら嫌いでやらない俺には、少しでも読めるような内容では無かった。 何か読める部分は無いかと、カルテの一番前にあるページを見たが、田村幸司や沢田啓一…など、患者であろう名前が並ぶだけであった、何の意味も無いと判断した俺は、早々にカルテを見るのを止めて机の上に戻した。
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