鴨頭の剣士…

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だが逆に、その構えで敵と戦えると言う事は、剣を振り上げた大上段の隙を、ものともしない技量があるからとも考えられる。 『くっ……格闘の技を使う妖魔の次は、剣術を使う妖魔か?』 目の前の妖魔が「技」を用いる厄介な相手と見た俺は、顔をしかめながら独語しつつ、胸ポケットから「アサメイ・オブ・ビーナス」を取り出し、折り畳まれた刃を展開する。 バチッ! 刃の切っ先から赤く細い雷光が迸る、その…次の瞬間には緑色に輝く霊光刃が生み出され、光源が分からない薄明かりの中で、眩い緑光が壁を照らす。 そして俺と同様、霧島さんも「ソード・オブ・アサメイ」を取り出していた、彼女の手にしたナイフ…アサメイからは、反り身の青い霊光刃が、淡い小さな光粉を撒き散らしながら生み出された。 俺と霧島さんは立っていた位置から左右に別れた、妖魔を挟むようにして攻撃する為だが…しかし、その程度の策など通用するのだろうか… 『…………』 チラッと霧島さんを目だけで見るが、表情からして既に彼女は戦う気満々らしい、半身の姿勢で、アサメイを持つ右手をやや小さく前に出し 左手は顎の前に持ってきて顎から首をガード、右足を前に一歩出し、膝は両足とも軽く曲げてステップを効かせやすくする… 俺が教えたナイフ技の基本の構えだが、教えた頃に比べてずっと形になっている、先ほど戦った老人顔に黒獅子の体を持つ妖魔の時にも思ったが、もう霧島さんは、俺よりも強いだろう。 【来ないのカ?ならば、こちらから…行くぞッ!!】 次には剣を振り上げた構えのまま、妖魔は滑るような勢いで俺の方に突撃してきた。 『くうっ!!』 俺は右手の「アサメイ・ビーナス」を「縦向き」にしたまま、左から右へ振るい、妖魔が振り下ろした剣を、緑の霊光刃の「鎬(しのぎ)」に当たる部分で横へと受け逸らす。 バチュ!ギャギュ!! 緑の霊光刃が放つ赤い雷光が弾ける音と、金属的な擦れる音が響く。 ちなみに「鎬」とは刀剣の平たい面の事だ、エッジ(刃)の部分は切れ味を持たせる為に、どうしても鋭角かつ薄くするしか無いが、刀剣の平面は最も肉厚な部分なので、刃を受けるのに最適なのだ、おまけに向こうの剣のエッジも刃零れさせられる。
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