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もっとも…それはあくまでも「金属の剣」同士の話、霊気が剣の形状に変化している「霊光刃」に、金属の剣と同様の刃零れなどは無い、敢えて「負担」と言うなら、使えばアサメイに内包した霊力が消耗するとか、宿っている「何らかの霊体」が、自身の霊力を消耗する点だろう。
ただ「霊体が宿っている」魔術武器の場合には、霊気を自ら集めたりして回復するのだが、「霊気が込められているのみ」の魔術武器は充填させなくてはならない。
加えて妖魔が持つ剣は、一見すれば金属の剣だが、間違い無く「この世」の武器ではない、実際の物質的な剣を「霊光刃」で「受ける」なんて真似は不可能だからだ。
【ふん!】
鴨頭の妖魔は、受け逸らされた剣を切り上げるようにして、連続で俺に切りつけてきた。
『っ…があっ!』
俺の反射神経では、その鋭い一撃を避けられる訳も無いし、何とか身をよじるのが精一杯だった、だが、それで攻撃の間合いから外れるのは不可能、あまりにも無意味な動き…体が恐怖に反応しただけのものだった。
妖魔の剣が俺の右の太もも辺りから、左脇までを一線し、俺は体に走る痛みに苦痛の声を上げ、後ろに倒れ込んだ。
『木村君!よくもっ…許さないわ!』
霧島さんが怒りの声を上げ、妖魔に駆け寄る足音が聞こえた、そして直ぐに妖魔の剣と、霧島さんの「ソード・アサメイ」が放つ、青い霊光刃のぶつかる音が聞こえてくる。
ガガッ!ギュンッ!ギャン!!
薄暗い診察室の中を、青い光がパッパッと目まぐるしく照らし、小さな光粉が舞い散る。
(霧島さんは…奴と「打ち合ってる」のか?)
俺は体を走り抜けた痛みが、少し和らいだので、軽く身を起こして、戦っている霧島さんの方を見た。
ガキャ!ジャン!!
「鴨頭」の妖魔が右から左へと、なぎ払うように振るう剣を受け止め、そのまま「ソード・アサメイ」の青い霊光刃を、奴の剣に噛み合わせたまま、霊光刃で刀身を撫でるように滑らせつつ前に踏み込み、「突き」へと転じて攻撃する。
シャ!
顔目掛けて突き出された、青い霊光刃を、妖魔は頭を振って避ける。
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